第22回「農業の効率化と遺伝子組み換え技術」(2014年8月放送)

 農業の効率化の歴史は、品種改良、機械化、化学肥料・農薬の使用など多岐にわたり、そのどの技術も農作業を効率化し、経済成長に必要な労働力を農家から排出することに成功し、安定的に食料を供給することを実現してきました。そして経済大国日本の礎となりました。

 現在、アメリカでは、もう一歩踏み込んで、遺伝子組み換え技術で食料を支配しようという戦略が着々と進められ、海を越えて日本にも浸透してきています。私たちが日常口にする食品や家畜飼料として広く利用されるようになってきているのです。

 そもそも、遺伝子組み換え技術とは、生物のDNA断片を組み換えることによって、通常の交配や突然変異誘発などの従来技術では、実現不可能だった新形質の獲得を目的とするもので、既に微生物や植物で商品化され、動物でも研究が進んでいます。

 遺伝子組み換え技術は賛否両論あります、しかし私は明確に「出来るならば食べたくない」と考えています。そもそも、一部の企業が作物の種を独占し利益のために我々の健康を差し出すような社会の変化に異を唱えずにはいられません。

 こんな事をお話しすると、どれほど食にこだわっているかと誤解されそうですが、「そんなこともない」というのが実際です。居酒屋に飲みにも行きますし、外食もします。

 ただ、農薬や化学肥料や有機肥料を多く使うようなものは食べないようにしたいのですが、残念ながら正確に見分けられないので、なるべく自分で育てています。

 また、遺伝子組換え飼料を使用していない食肉を買いたいと思っても、スーパーにはなかなか売っていないので遺伝子組み換え飼料を使っているかもしれないという前提で買っています。鶏卵などは、地元のお米中心の飼料を使用している農家から直接買っています。味噌は地元の大豆で母が仕込んだものを食べています。

 あとは、価格競争だけに明け暮れるお店ではなるべく食べず、こだわった素材を使用しているお店で食べたり、買ったりする。

 これだけで、社会は変わっていくと思っています。事実を知って、しなやかに選択し、出来れば自分で作物を育てる。皆さん素敵だと思いませんか。

 「物質主義に溺れることなく心身ともに健全で、いかなる逆境にも挫けない気骨と主体性の持ち主たれ」これは、東京農業大学の初代学長、横井時敬氏の言葉です。

 私もモノやお金に支配されず、季節の移り変わりに寄り添って作物の種を次の世代に引き継いでいくような農業者になりたい。ただそれだけです。