第13回「生きることは食べること」(2014年6月放送)

 農家となって、1年目の夏。初めて自分で育てたとうもろこしを味わった時のことです。

 畑から採ってきてすぐに蒸かしてアツアツのうちに食べた時のあの感激。実はプリプリと張りがあり、かぶりつくとジューシーで甘い。新鮮で旬をまるごと食べているような感じです。

 でも近頃、旬が失われてきているように思います。12月にいちご、4月になるとスイカ、キュウリやトマトは1年中スーパーに並んでいます。栽培技術の進歩でいつでも何でも食べられるようになりました。とても豊かな食生活になった反面、なくしてしまった感動もあるのではないかと思います。「早く食べたいな」と心待ちにし、やっと店頭に並んだ初物を食べる時の喜び。そして、旬の物はとても美味しく、体が欲しているものなのです。夏野菜は体を冷やし、冬の根菜類は体を温める。自然のままに旬を大切にして美味しい物を食べていれば免疫力もあがりそうですよね。

 最近、食育ということが話題になっています。食育とは農業体験をさせることのように思われがちですが、それだけではなく、食をとりまく事柄を幅広く奥深く学ぶことだと思います。「どんな風に実っているの?」「どう調理するの?」「どう食べるの?」好奇心のカタマリの子どもが放つ色々な疑問に答えられますか。算数や国語は学校や塾があるけれど、食育は家庭がその場にならなくてはいけないと感じています。そのためには、子どもと一緒に私達大人も学ばなければならないことが多くありそうです。家族だんらんの食事の場で、料理を囲みながら色々とお話してください。我が家では、お味噌汁に入った豆腐を食べながら「これは何からできているかわかる?」「大豆っていうお豆からできているんだよ~」と話をし、口に運びます。こんな風に話をしながら食事をしていると、子ども達も食に興味をもち、今まで食べなかった物も色々と食べてみたりします。 そして、野菜畑に連れていくと、キュウリやトマトをそのままかじり、とうもろこしを採り、「トトロのメイちゃんみた~い」と、喜んでいます。

 日本の豊かな食文化と料理の数々。料理の美味しさだけでなく、素材が本来もっている旬の味を伝えていきたいです。それによって子ども達が、食とは体を作る必要なもの、楽しいものと感じ、その「食」を大切に思うように育って欲しいと思っています。