農家の収入保険制度。

現状、自然災害などで被害を受けた農作物の保証制度として、農業共済という仕組みがあり、農機具、建物、園芸施設、家畜・果樹・畑作・稲などの作物共済からなっている。
掛け金と事務費の1/2を国が財政負担してくれていて(約1000億)、 農機具、建物などは、掛け金負担も少なく、とても助かっている。ただ、作物共済については問題が多い。稲は当然加入(強制加入)なのに、支払いは受けた事が無い…と言う人がほとんどですし、JAへの出荷が100%でないと、収穫量等が確認できないので損害が出ても支払われない事があるのです。
そこで、「収入保険制度」が検討されている。共済団体が新たな全国組織を作り、農家の所得を青色申告で確認し、5年平均の9割以下になったら、補填しようというものらしい…。
そもそも、これでは事務負担ばかりが増え、青色申告で複式簿記をしている農家だけが対象でこれまでの農業共済の問題も解決されるかどうか不明で、しかも耕作面積が基準ではなく、所得が基準なので、集約的農業をしている農家ほどメリットがありそうだ。まだ検討段階なので、何とも言えませんが、実現までには様々な障害があるように感じる。

それに対して、アメリカやEUのように、直接支払制度に移行するべきだ。と主張する人も多い。しかし、これに近い「戸別所得補償」を当時の民主党が実施した時は、農家は優遇されてるんだから…と価格下げ圧力が強まり、結局農産物価格が下がり、意味のないものになってしまった。直接支払制度については、導入するのであれば、EUのようにCAP(Common Agricultural Policy)を設定し、農家を維持するための補助金ではなく、農地を素敵な環境を維持したまま保全するための補助金だということを、農家にも市民にも広く知ってもらうことが必要かと思う。その上で、農作業をしていない地主に富が集まったり、賃借料が跳ね上がったりするのを抑える政策を同時に導入すべきだ。

私は、どの政策をとるにせよ、日本国民が自分のことだけ考えていたら上手くいかない。
農業が営まれ続けるという事は、そこに住む自分たちにとって非常に価値があることで、身近な農産物を買い支えることは、社会的に意義があるという考え方が、広がらなければいけないと思う。まずは、農家が田んぼや畑を耕し、農地の多面的機能を維持する農業は、意義ある産業なのだということを理解し、発信することから始めなければならない。